戦術本『麻雀AI戦術 人工知能「爆打」に聞く必勝法』レビューと読み方

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個人的に期待していた新作戦術本『麻雀AI戦術 人工知能「爆打」に聞く必勝法』水上直紀氏著(爆打本)を読んだので感想等を書きます。一言でいうと、初心者~中級者向きの実践的な戦術本という感じでした。以下詳細。

目次

爆打とは

IT技術の発展により、将棋のponanzaや囲碁のAlphaGoなど、ボードゲームでのコンピューター、AIの発展が世間を賑わせています。では麻雀ではどうかというと爆打というAIがオンライン麻雀である天鳳に参戦し最高段位九段(ただし特上卓)というトップレベルの成績を出しています。この爆打によるシミュレーション結果を基にこういう時はどうすればいいのか、というケーススタディ的な解説を行っているのが本書です。将棋などの世界では今や当たり前なのかもしれませんが、AIに教えてもらうという形式の本は麻雀では初めてになるのではないでしょうか。リーチ、押し引き、鳴き等の全81ケースについて、シミュレーション結果を基に爆打が学生に麻雀を教えるという会話形式の本です。

データを読み解く

本書は爆打のシミュレーションを目玉にしているので、当然シミュレーションによるデータが全ケースに掲載されています。その中でも特に期待最終順位の良さを判断基準にしています。期待最終順位については後述しますが、他にも、その瞬間に切る牌による放銃率、和了率、切った牌が通った後の放銃率、被ツモ率、横移動率、流局率、ひいては場況から考えられる他家のテンパイ率までが各ケースにおいてはじき出されています。なんとなく優劣の分かる選択であっても、実際にそれらの選択にどの程度の和了率や放銃率の差があるかを見ていくと、意外な発見があったりします。一見リスキーに見える選択であっても、その瞬間の放銃率が高いだけで通ってしまえば自分の和了率の高さによってその後の放銃率は低かったり、一番広い受けにしたところで他家のテンパイ率が高いと自身の和了率は大きく上がっていないなど、様々な指標を基に状況の分析ができるとより実戦的な判断力が養えます。ある場面での両面待ち(和了率)、無筋(放銃率)、追っかけリーチ(和了率等)、他家の二副露(テンパイ率)というように普段言葉として曖昧に表している情報が具体的にどの程度の数値を有しているのかをざっくりとでも覚えておくと良いでしょう。

期待最終順位という明確な指標

爆打の最も大きい判断基準として紹介されているのが期待最終順位です。期待最終順位とはある選択をしたときのその半荘の平均順位のこととされています。この期待最終順位が一番良い選択を正解として紹介しています。例えばAを切るかBを切るかという選択について、Aを切ると期待最終順位が2.50でBを切ると2.43だとすればBを切った方が良いという判断になります。たとえAを切った方が方が和了率が高いとしても、総合的な指標である期待最終順位が低いなら良い選択ではないということです(大体放銃率が和了率の増加と比べ物にならないくらい増加したりしていて総合的に劣る)。本書ではこの期待最終順位の差の大きさを4段階に分けており、!マークの数で表現しています。!が一個だと0.03~0.06の差、!!だと0.07~0.09の差、!!!だと0.1以上の差です。!が無いものは0.03未満の差であり場況など他の影響によって有利不利が変わると言えるものです。つまり!の数が多い問題ほどより間違えてはいけない重要なケースだと言えます。

この本では全81ケースについて扱っていますが、!!!のケースは13問あります。また、!!のケースは8問あります。この重要度の高い問題について、なぜ重要度が高くなるのかを深く掘り下げて考えてみると良いでしょう。また、問題を読むときは答えは何かということに加え自分の体感での選択の良し悪しの差の大きさも考えてみて、体感では大差だと思ったら微差だったり、その逆だったりしたときには仮に正解していてもしっかり再考してみましょう。筆者も自身の体感との差が大きかった問題がいくつかあり勉強になりました。

立体牌図などを用い、細かい判断についてどちらが良いかという判断について解説する本は多いですが、それらがどの程度の差による良し悪しなのかを具体的な数値で提示する本はまだ少ないです。まさにコンピューターのなせる技という感じで、麻雀研究の発展を感じさせながら実践的でもある良書だと思いました。

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