暑さと湿気にやられてきています。
今回は先日発売された白鳥翔プロの戦術書「トッププロが教える最強の麻雀押し引き理論」を紹介します。
白鳥プロはプロ麻雀連盟所属のプロ雀士です。若手ながら麻雀マスターズの連覇や第18回モンド杯での優勝、AbemaTVで放送している各団体のトッププロが参戦するRTDリーグへの参戦など今注目される実力派のプロ雀士です。
そんな白鳥プロの戦術書は初心者〜中級者におすすめできる押し引きの本です。今回はこの本を押し引きの考え方と交えて紹介していきます。
目次
押し引き特化本
本書は押し引きの解説に特化した本です。
押し引き本としては福地誠氏の「現代麻雀 押し引きの教科書」がありますが、押し引きの教科書はどちらかというと場面単位の押し引きの問題集的な本です。
一方本書は押し引きのための思考を文章ベースで解説した本です。
構成としては、第1章「押し引きの絶対ルール」第2章「押し引きの実践テクニック」第3章「勝敗を左右する引きの技術」第4章「強者が実践している押しの技術」という全4章で構成されています。また、章の間にはコラムとして「白鳥翔の押し引き自戦記」が挿入されています。
また各章の中では「理論」としてさらに小さくテーマ分けして解説されています。例えば第1章では理論01「イーシャンテン時の押し引きで勝敗は決まる」理論02「押し引き判断は状況によって変化する」理論03・・・というように各テーマごとに解説されています。
それぞれの理論の中では大まかには、白鳥プロの考え→牌姿を用いた具体的な例→さらに類似例など、という流れでの解説になっています。
第1章では基本的な押し引きの基準や考慮すべき情報について説明されています。イーシャンテンからの押し引きを基本に、押しすぎている例やあえて押さないといけない例などを解説されています。
重要な部分は太字で赤線が引いてあったり、各理論の最後には一言でポイントがまとめてあったりと視覚的にも分かりやすい作りになっています。
立場を切り替える
第2章以降では実践的な押し引きの考え方を解説されています。点数状況はどうなっているか、相手の切った牌が手出しなのかツモ切りなのか、ノータイムで切ったのか間があったのか、相手は親なのか子なのか、、、と様々な観点を考慮して押し引きを決めていく思考を解説しています。
対一件リーチに対する押し引きは多くの場合は自分の手格好や点数状況を考慮してある程度は機械的に決めていくことができます。
ただ、対二件リーチや、鳴いている相手への対応、特殊な点数状況での対応については機械的に処理することが難しいこともよくあります。その際に意識すると良いのが立場を切り替えて考えることです。
例えば鳴いている相手への対応については、「相手が既にテンパイしているかどうか」というのが押し引きを決める重要な要素になります。
そうすると自分が対応する側の時に考えるべきなのは、相手が何副露しているか、相手の手出しから考えてテンパイしているかどうか、などです。
本書でも詳しく解説されていますが、例えば明らかに索子以外の色を多数切っていて、役牌ポンを二つしている相手から手出しで索子が切られれば、いよいよテンパイ濃厚と思えます。もう索子は安易には切れないな、と考えます。
ということは、自分がホンイツをする側のときにはいかにテンパイしている風に見せないかということが重要になります。実はテンパイしていないのに索子を切り出してしまえば、もう索子は簡単には出てこないので、鳴いてテンパイするのも難しくなります。
また、例えばリーチしている相手がいるときに主に考えるのは自分がオリるかどうかです。これは自分以外の2人も同じです。なので、1人がリーチした瞬間、他の3人は同様に押し引き判断を強いられます。
仮に自分がオリを選択したとして、それで安心してはいけません。残り2人も自分と同じ判断を強いられているはずです。安心していいのは他2人もオリを選択したと分かった時だけです。
他の2人が無筋を連打してきたのであれば安心はできません。リーチに対して無筋を連打してきたということは明らかに押しているわけです。明らかに押しているということはリーチに対して勝負できる手であり、つまりテンパイの可能性が高いです。この場合対応しないといけないのはリーチ者だけでなく押してきた相手もです。
このように、
・ホンイツ者からその色が切られたらかなり危険→では自分がホンイツ者であればどうすれば危険に見えないか?
・リーチに対して勝負手なら押す→リーチに対して押している人がいるとはどういうことか?それに対して自分はどうすれば良いか?
というように、本来自分だったらそうするだろうという考えを他者に当てはめて考えることは上達する上でとても大切な考え方です。それぞれの相手に立場を切り替えて考えてみましょう。相手の動きを見て、なぜそうするのか?そのような動きになるのはなぜなのか?それを踏まえて自分はどうすればいいのか?という視点は自分で常に意識的に思考しないと得られません。
これは広義には読みの技術とも言えるかもしれません。手牌読みや山読みでなくとも、相手の動きに対してなぜそうしたのか?ということを考えると押し引きの幅が広がります。
本書は「こういうときは押すべきか?」という一問一答型というより、状況はどうなっているか?この点数状況であれば相手はどう動くのか?あるいは自分がこう動くことで相手はどう動くのか?という思考の解説が結構あります。
後半部分では読みを交えた押し引きなども扱っており、難しい部分もありますが、押し引きの幅広い思考を鍛える参考になると思います。
判断材料を拡張する
本書では手牌読みを用いた上での押し引きについても解説されています。
例えば場にが3枚見えている状況でを切った人がスライド(からを引いてを切る)だと読めれば4枚目のはその人の手の中に存在するのでの壁が浮かび上がりの安全度が高いことが分かったりします。
そうすれば例えばを押したいけどワンチャンスだから危ないかも、という場合でも実質ワンチャンスではなくノーチャンスだから大丈夫だろう、と押すことができます。
これは読みを使うことで押し引きの幅が広がる良い例です。
また、代表的な押し引きの判断材料の例として①相手の予想打点、②自分のシャンテン数があります。いわゆる平面的な押し引き問題はこの程度の判断材料をもとに判断できるかもしれません。
ここから例えば機械的に「相手の親リー(①)に対して自分がイーシャンテン以下(②)だったら絶対に押さない」という自分の中の押し引き基準を設けることができます。
この基準はそこまで悪いものではありません。「対親リーにイーシャンテン」という状況に対してオリが正着になるケースは少なく見積もっても半分以上はあると思えます。少なくとも何も判断基準を持たないよりは良いでしょう。
ただしやはり精度に欠ける部分はあります。
例えば相手の親リーに対して自分がイーシャンテンでもオーラスのラス目という状況であれば多くの場合で押した方が良いのではないかと考えられます。
あるいは平場でも押す牌が無筋ならダメかもしれませんが、安全度の高い牌なら押した方が良いかもしれません。
そうすると今度は①相手の予想打点②自分のシャンテン数、だけではなく③点数状況④切る牌の危険度、も判断材料になります。
なので先ほど作った「相手の親リー(①)に対して自分がイーシャンテン(②)だったら絶対に押さない」という判断基準を
「点数状況が平場(③)であれば相手の親リー(①)に対してイーシャンテン(②)なら無筋456(④)は押さない」
と改良することができます。そうするとより詳細な判断材料の上で作っている基準なので①と②だけをもとに作った基準よりは精度が高そうです。
一方ででは点差が大きい時は具体的にどうするのか?また相手が子かつ切る牌が筋28ならどうなるのか?というように判断基準の場合分けが複雑になります。
またその判断基準は4巡目と10巡目で変わらないのか?というように他にも判断材料(今回なら巡目)は存在します。
しかし、判断材料を増やしながら場合分けもしっかりと考えて複数の判断基準を作っていくと、「相手の親リーに対して自分がイーシャンテンだったら絶対に押さない」という基準しか作らずそれを愚直に実行している人よりも明らかに判断の精度は高まります。これが押し引きの上達でもあります。
もちろん、例えば「南場の4巡目のトップ目の親リーチに親とは8000点差以上離れている状況で自分は2着目で現物は中抜きの一枚しかない愚形含みで現状3ハン以下のイーシャンテンであれば5%の危険度以上の牌は押さない」という超細かい基準をあらかじめ作っておくのは無理がありすぎます。
ある程度暗記的に覚えておく判断基準は少なくて問題ありません。明らかに押し引きに影響が大きそうな部分のみを抜粋しておぼろげにでも覚えて、細かい点は対局中に考える方が現実的です。
ですが判断基準であれ、対局中の判断であれ、判断材料自体は拡張させていく必要があります。点数状況を考慮しないよりも考慮した方が良いですし、供託があるときとないときでは判断が変わるかもしれません。また、そもそもの判断材料の認識が変われば結論も変わります(上述したように読みの成果で牌の安全度が変われば結論も変わる)。
本書では点数状況や読み、相手の動きを踏まえた押し引きというように押し引きを多角的に検討しています。特に初心者にとって押し引きの判断材料を増やしたり、新たな着眼点を得る一助になるはずです。